日本のピルの普及率は外国と比べかなり低い割合です。浸透しない理由を分析してみます。

ピルの普及率

病室 ピルは正しく服用すれば99.9%もの高い避妊効果が期待でき、またピルの値段もお手ごろで買いやすいにも関わらず、外国と比べると日本はまだまだ浸透していません。ホルモン量をギリギリまで抑えた低用量ピルは、副作用の少ない安全な避妊アイテムとして世界中で使用されています。しかし、ひと昔前の日本と比べれば、人工妊娠中絶件数は減少傾向にはありますが、それでもなお浸透しているとは言えません。実際の日本の避妊状況やピルの普及率はどのくらいなのでしょうか?なぜ、日本はピルが浸透しないのでしょうか?

日本と外国のピル普及率

日本は他の先進国と比べ、ピルの普及率はかなり低くなっています。United Nations World Contraceptive Patterns2013の資料より、以下が普及率の国際比較です。

日本と外国のピル普及率の比較
フランス 40.6%
ドイツ 37.2%
オーストラリア 30.0%
イギリス 28.0%
アメリカ 16.3%
日本 1%

ちなみに、ピルの普及率の高かったフランスでは、コンドームの使用率は7.9%とかなり低い数値です。欧米ではコンドームよりピルの方が避妊対策のベースになっているようです。

日本の避妊方法の実態

コンドーム ピルの普及率が低いというデータとは別に、日本人は実際にどのような避妊対策をしているのか、社団法人日本家族計画協会の調査結果があります。1年間で実際にとられたことのある避妊方法は以下の通りだったそうです。(2015年・複数回答可)

1位:コンドーム(82.0%)
2位:膣外射精(19.5%)
3位:オギノ式(7.3%)
4位:ピル(4.2%)
5位:基礎体温法(3.1%)
6位:女性の不妊手術(1.5%)
7位:子宮内避妊具(0.4%)

実際に避妊効果がそれぞれどれだけあるかというと、コンドームに関しては約85%と言われています。おそらく、コンドーム=100%の避妊率とイメージしている人も多いのではないでしょうか?低用量ピルに比べたら低い理由は、正しく装着できていなかったケースがあるからです。正しく装着することで避妊率もあがります。ただ、99.9%の避妊率を誇るピルに比べたら、どこかしら物足りない数字ではあります。

膣外射精やオギノ式といったコンドームやピル以外の避妊法は、安全面で言うと確実性はありません。むしろ、膣外射精は特に避妊効果はないといっても過言ではありません。ピルの避妊成功率が99.9%を誇っているにもかかわらずに浸透せず、誤った避妊知識がいまなお蔓延しているのが日本の実態です。

日本が浸透しない理由

今の日本の現状と外国の現状を知った上で、高い避妊率を誇るピルがなぜ日本では普及しないのか、理由がいくつか考えられます。以前よりは少なくなってきているものの、偏見や先入観はいまだあるようです。

敬遠する最大の理由

頭痛の女性 ある調査によると、なぜピルを使わないのか?という問いに対し、「副作用があるから」という回答が一番多かったと言います。近年では低用量や超低用量が中心となっているのでホルモン量が少なく、高用量ピルを使っていた以前のような副作用はほとんど見られなくなり、症状も軽度なものが大半を占めています。日本ではピルの副作用ばかりが叫ばれていて、健康な若い女性にとっては月経痛が改善されたり、生理が規則的になったり時期をコントロールできるなどの効果もたくさんあります。もちろん服用できない人もいますが、副作用ではなく副効用に注目するとどれだけ優れているかがわかります。

副作用と合わせて敬遠するもう一つの理由が、ピルを飲んだら妊娠しなくなるということです。そのような誤った情報や知識がピルに対する偏見や先入観を植え付けている可能性が大きいです。ピルを止めたら妊娠することももちろん可能です。ピルを止めて1~3ヶ月ほどで、たいていの人は体が妊娠可能な状態に戻ります。逆に、卵巣を休ませたことによって妊娠しやすくなるかもしれません。妊娠できなくなるというのは大きな誤解です。

歴史的な背景

日本で低用量ピルが解禁になったのは1999年と諸外国に比べ非常に遅かったという背景があります。ピル発祥のアメリカから比べると25年遅く、国連に加盟している国の中で最後まで低用量ピルを承認しなかったのが日本です。臨床試験開始から9年という長い期間を要しています。外国では、「中絶の多い日本でなぜピルを使用しないのか?」と以前から問題視されていましたが、解禁に至るまで長い時間がかかりました。その遅れが、現在もなお普及率の上昇に繋がっていない部分の一つかもしれません。

男女の意識の違い

日本人女性の多くは、控えめで自分の意思をハッキリと伝えることが苦手とされてきました。そのため、避妊を男性任せにする場合が多く、自分の体は自分で守る!という意識に欠けているかもしれません。内閣府の調査によると、日本では73%が「男性が避妊すべき」と思ってるのに対し、フランスでは79%・アメリカでは57%が「女性が避妊すべき」と考えているという結果があります。外国人女性の場合、男性がコンドームを使用しても破損や失敗も考えられるため、万が一の事態も想定して自分を守るためにピルを使用している人がたくさんいます。

性行為の減少

近年の夫婦やカップルは性行為の頻度が減少している現状から、毎日飲み続けなければならないというピルがなかなか面倒だという声を多く聞きます。1日1回服用するだけにもかかわらず、さほど頻度のない性交回数に対する危機感が薄くなってきているのは事実です。その結果、その都度対応できるコンドームに人気が集まるのではないでしょうか。ちなみにDurex社の調査結果によると、1年間の性交回数が欧米諸国では軒並み100回を超えているにも関わらず、日本は最下位の45回。アジア諸国と比較してもかなり少ない結果となっています。

教育の遅れ

黒板と女性 日本ではピルの使用だけでなく、性教育自体にも先進国より遅れをとっていました。性の話し=タブーのような風潮がいまなお残っているかもしれません。外国では幼少期から学校で性教育が行われ、子供の頃からピルの有用性を教えられています。ピルを飲んでいると言ってマイナスイメージで見られることもなければ驚かれることもないですが、日本はどうしてもマイナスイメージで捉えられることがまだまだあるのがもう一つの要因です。性に対して、またピルに対して偏見や先入観のある人はまだまだたくさんいるはずです。

知識の低さ

日本では以前、1990年代のエイズ問題の際にこの問題が顕著になりました。エイズで騒がれた際にピルの普及率が増加すると、コンドームの使用率が下がったのです。よってエイズが蔓延するという状況に陥りました。このケースの場合、感染を防ぐためにはピルではなくコンドームが必須にもかかわらず、逆の動きとなってしまいました。その結果、ピルを悪く捉えることが多くなり誤解されることで嫌悪する人たちも増えてきたと言います。きちんとした知識を持つことが重要なのですが、なかなか現状では進んでいないようです。

購入の煩わしさ

海外ではドラッグストアなどで簡単にピルを買うことができるところが多くなっています。ピルが生活に浸透しているのです。逆に日本では、病院処方で購入してる人も多く、煩わしさや経済的に高くなるということで敬遠してる人も多いように思います。個人輸入を代行してくれる業者から手軽に通販で購入できるのですが、なかなかその手段を知っている人も少ないようです。ちなみに、日本で避妊方法として一番多いコンドーム、今ではコンビニやドラッグストアで手軽に買える時代です。その手軽さが秘密なのかもしれません。

値段の誤解

ピルに対する保険給付の比較をすれば、基本的にはアメリカ・イギリスは100%、ドイツは20歳未満が100%、フランスは65%に対し、日本は0%となっています。病院で処方されれば、ピル代だけでなく診察料・指導料・処方箋料に加え病院までの交通費など、何かと経費がかかってしまいます。ピル=高いと思ってる人がまだまだいるのではないでしょうか?ピルは、値段を病院と比較すると、通販の方がかなり安く購入することができます。また、保険対象となることでさらに病院での処方が進み手軽に求める人が増えるかもしれません。

近年の動き

笑顔の女性 発展途上国では、妊娠・出産は常に死と隣り合わせであり避妊が大きな課題となっています。途上国では妊娠・出産による死亡率が高く、多くの人の夢や希望が奪われているのが現状です。ジョイセフが運営しているホワイトリボン・ジャパンでは、全ての女性が安全に妊娠・出産できる世界を目指し活動しています。日本人にとって、妊娠・出産・中絶・避妊を考えるきっかけになるかもしれません。

日本で妊娠・出産が原因で死亡することは極めてまれですが、時代が変化するとともに女性の心の在り方・母親と子供の関係・妊娠と避妊について悩む女性は増えてきました。そのため正確な情報発信と共有を目指し、日本産婦人科医会などが女性のための活動を行っています。全国各地で性教育セミナーや研修会を開催し、若い世代からエイズや妊娠・避妊に対する確かな知識を身に付けさせるために教育をし続けています。

また、東京オリンピック開催の決定の後、女性アスリートたちがピルで月経時期をコントロールしていることや、引退後ピルを止めすぐ妊娠したことなどが公になりました。生理によって本来の力が出せずに終わってしまったアスリートたちは、ピルで生理をコントロールできることすら知らなかったと言います。組織単位で低用量ピルに対する知識をしっかり持つこと、そして低用量ピル使用を勧めることで、試合当日生理をずらすことでコンディションの調整ができるのです。もちろん、アスリートだけではなく妊娠の可能性の高い女性全体に言えることですが、日本でも少しずつ意識の変化や偏見の改善はされてきています。

望まない妊娠は女性に少なからず負担をかけます。避妊は自分自身を守るために必要不可欠です。パートナーばかりを頼りにするだけではなく、自ら主体的に避妊を行うことも考えましょう。女性の避妊にはピルが役立ちます。

通販でもお手ごろな値段で購入することも可能です。海外で気軽に買えるものが、日本だけ危険ということは考えられません。ピルをしっかり理解することで、上手に利用するとホルモンバランスをコントロールできる有効アイテムとなるのです。活用することで女性のQOL(生活の質)の向上に目を向けてみませんか?

江戸時代の避妊方法

遊郭 江戸時代、吉原で働く遊女たち以外はあまり避妊をしなかったそうです。しかし、避妊具が存在していない江戸時代に遊女たちはどのように避妊をしていたのでしょうか?

遊女たちは、「朔日丸(ついたちがん)」や「月水早流(げっすいはやながし)」という避妊薬を飲んでいました。生理不順にも効くという現在のピルのような効果が謳われていました。共同のトイレなどにも広告が出ていたので、庶民にも広く知られている薬です。

朔日丸は、毎月1日に飲むと妊娠しないという避妊薬、月水早流は、1日3回塩を入れたお湯で飲む粉の避妊薬でした。成分は不明でしたし、むしろ堕胎薬として出回っていたとも言われています。他にも、和紙を濡らして膣の奥に詰めたり、終わったあとに洗浄するという避妊方法がよく行われていました。また、動物の皮や水牛の角・べっ甲・魚の浮袋などを男性側につける避妊具としていました。しかし、この避妊具は、効果がないのでアダルトグッズとして使われていたそうです。ちなみに、「四ツ目屋」という避妊具や媚薬を売るアダルトショップも存在していたようです。

どの避妊方法も効果はたかが知れています。妊娠した遊女たちは、中条流という堕胎専門医によって堕胎させられていました。その方法も残酷のもので、鬼灯(ほおずき)の毒や水銀と米粉が混ざった薬を飲んだり、ごぼうを膣から深いところまで指して強制的に流産させたり・・・。何回も流産することで避妊になるという避妊方法もあったくらい残酷でした。